三島由紀夫の遺言(4)人間交差点

 夢判断には意外なる解決という面もあると思います。

 

 例えば、突然、夜の夢の中に、小学校時代口もきいたことがない忘れ去られた人間が登場したりすることがあったりします。なぜなんだろうな、全然関係ない彼が・・・・・。

 

 例えば、彼の名前が田中くんだったとします。意味があるのは、その彼そのものではなく、田中という姓だったりすることもあることです。

 

 なぜか、最近、自分を隣の職場からつけねらっている田中氏、それを潜在意識で感じていた場合、忘れ去られた小学校時代の田中くんが夢の中で自分をじっと見つめていたりということもあったりするわけです。

 

 迷子になって彷徨い、ようやく辿り着いた不思議な駅・・・・。駅名が「礼」なんていう場合、なんでこんな夢をみたんだろうと不思議に思っているうち、身近に礼子という女性がいて、潜在意識の中で、彼女の中に彷徨える先を見いだしていたという解釈も可能だったりすることがあると思います。

 

 お盆休みの最終日に、日帰りで実家に帰ったときです。

 

 ワタシになつく小学校5年生の甥っ子が、キン肉マンラーメンマンのカードを自慢げに見せつけます。

 

 そういえば、最近、やたらとキン肉マンの広告宣伝が街中に溢れていることに気づいたワタシでして、少し疑問に思ったわけです。

 

 キン肉マンといえば、ワタシが子供から大人に成長する一時期に始まったアニメ史に残る名作です。

 

 今年の大晦日には、格闘技中継で、ボブサップキン肉万太郎が激突するそうですね。とても興味のある企画です。しかし、なぜ、今年になってそんなに騒がれるのだろうか。

 

 そのことを甥っ子に質問するや、こんな返答があったものです。

 

 「今年はね、キン肉マン生誕29周年の記念すべき年なんだよ。叔父ちゃんは、誰が好きだったの?」

 

 「29周年・・・・?」

 

 「ニク、肉の年なんだよ。」

 

 ああ、そういえば、街中のポスターにもそんな記事を見かけたような気がするな、なんかゴロのよい感じがしたことを思い出したわけです。

 

 そのときですね、ワタシの胸にはハッとしたものが溢れかえり、それは一瞬にして冷や水のように全身を凍らせたわけです。

 

 あの夢・・・・。

 

 淫夢の中で、彼女が語ったコトバを思い出したのです。

 

 今日は謝肉祭よ、記憶の片隅ですが、正確にはこんなことをいっていた過去の事実を思い出したのです。

 

 ワタシの誕生日はね、肉の日だから覚えていてね・・・・。

 

 肉の日・・・・。

 

 ニク=29、つまり29日・・・・・。

 

 29日、29日・・・・・・。そうだ、12月29日・・・・・。

 

 あの女だ・・・・。

 

 突然、ワタシの脳裏には記憶の彼方に追いやられていた、或る女性の幻影が、やはりのっぺらぼうのままですが、鮮やかに浮かび上がったのです。

 

 そして、三島由紀夫・・・・・。

 

 すべてが合点のいく話じゃないか。ワタシはここに人間の潜在意識における怖ろしさを感じることになります。

 

 希美子・・・・。

 

 もはや容貌さえも忘れてしまったほんの一瞬人生の交差点ようなところで出くわした女・・・・。

 

 今から12年前、ほんのふとした偶然で知り合った不思議な女性の面影と三島由紀夫とを同時に思い返すわけでして、ここからがこの話の本題となります。