ラブドール(12)女王様

  昨年の初頭のことです。

 

 スポーツ新聞の下欄、広告記事の写真に格好いい男3人がビール缶を片手に微笑んでいるのをみてドキリとした記憶があります。

 

 新種の発泡酒のコマーシャル写真なのですが、かなり大きなスペースでして、そういえばそんな写真が結局期間限定ですが、地味に日本社会ところどころに静かに発信されていたものです。

 

 いつの間にか、そんなポスターとまではいかない、半年間位世に舞った男伊達、3人衆のひとりに私の眼が釘付けになったのには不思議な因縁めいたものを感じたものです。

 

 40歳半ば過ぎのナイスミドル達の渋みの中に、藤原紀香の披露宴で華麗な舞いをみせた郷ひろみよろしく永遠の若々しさを思わせるものも滲んで感じられ、それがビール会社のイメージ戦略だったことは素人でもわかります。

 

 一人は元野球選手の某ですが、そんなに有名な選手じゃなかったですね。知る人ぞ知るという感じでしょうか。もう一人が一世を風靡した伝説のAV男優でして、こちらの知名度も元野球選手と同じ位でしょうか。

 

 そして、もう一人、私を唖然とさせた男というのが、赤木さんだったわけでして、慌てて横の小さな肩書きを見て、やはりそうだと得心した次第。

 

 六本木ヒルズに会社を構える○○ブティック経営という肩書きに並んで××大学アイスホッケー部顧問と記されているのですが、十数年前に比し頭髪に薄いものは感じられるものの、女を虜にする異様なオーラと、魔力のように人を吸い込む目つきにだけは一切変わりないものを感じたものです。

 

 しかし、一体何で赤木さんが・・・・。

 

 日本中で赤木さんを知っている人というのは何人いるのだろうか、二流の元野球選手と、少しだけ有名な元AV男優、それに加えて一般人の赤木さんを並べたことには非常な奇異を感じたものです。

 

 六本木界隈ではその後相当有名になったということなのかな、そんな風に思ったものですが、やはり、彼には通常の男に比し、際立った個性があったものです。

 

 それは、この世のものとは思えぬ程の美男子だったことです。

 

 決してジャニーズ系の甘いマスクというわけじゃないんですよね、何というのでしょうか。戦前の着流しの遊侠のような雰囲気を有しており、鋭利な刃物のような目つきには、杉良太郎をもっと痩せさせて格好良くしたような風貌が浮かび上がっていたものです。

 

 三人で缶ビール片手に、こちらに微笑む絵の中にですね、私は10数年前に大村さんが連れ歩いていた六本木の女王様ナオミを思い起こしてしまったものです。

 

 六本木の男伊達、赤木さんと女王様ナオミとの関係についてこれから回想することになるわけですが、私が初めてナオミを見かけたのは、当時、大村さんが取りかかっていた禁断のラブドールについて性器に着手したころのことですから、アスファルトが焼け付くような時節、7月の半ばだったような記憶があります。

 

 再び伊豆山中から彼が遊びのために上京してきたときのことです。

 

 昼間に雑誌社に電話があり、そそくさと待ち合わせのアマンド前で待っていたときです。

 

 まだヒルズが出来る前の時代、2700億円をかけて竣工に入る、それよりも数年も前の話です。